滝いろ|戸倉谷 V字滝

活動記録



中奥川 戸倉谷の滝【奈良県 吉野郡 川上村 中奥】

コメント

今年の総決算としての遠征。
向かったは秋の紀伊半島。
険悪な中級の沢で何ができるのか?
集中力を高めて向かってきました。

滝の記録

訪問日 2016年9月22日
活動の形態:上級滝巡り&沢登り(単独)/レンタ
装備:8mm30m×1,8mm20×1,沢タビ,カム,ハンマー
感動度(V字):かなり~限りなく

①奈良へ

前日夜に新幹線で京都へ。
借りた車を奈良県へと走らせる。

今回の相棒は黒いFIT。
燃費抜群のいい車でした。

当初考えていたのは、
黒石谷の霞滝(あわよくば鬼滝)の
日帰りピストンでした。

しかし、前日までも雨は多く、
22日の予報も午後から雨。
長く、水量が多い黒石谷に
行ける状況ではありません。

そこで数日前に、
中奥川の戸倉谷にいくことを決意。

美しいV字滝が魅力的な短めの沢ですが、
ゴルジュ内の険悪さが謳われ、
数日間生きた心地がしませんでした。

中奥川沿いに入って、
入渓点はかなり広いスペースよりも先でした。

本流もけっこう水量があります。

②記憶なき序盤

最初の20m滝に着くまで、
本当に戸倉谷なのかと不安がありました。
いくつか小滝も出てきましたが、
あまり印象に残っていません。

水線沿いにずっと越えていきました。

③最初の関門

無事20m滝が現れて戸倉谷だと確信。

つるつるに磨かれた岩と滝の規模が、
威圧的な雰囲気を醸し出していました。

直登には2時間かかるそうです。

ここは当然右岸高巻きです。

滝への落ち口トラバースのルートは
単独では命がけ。複数でも僕には不可能。

真ん中の岩場を登っていきますが、
5~6m登ったところで、
全く手かがりがなくなり、
行き場がなくなりました。

一瞬焦りましたが、
ハーケンを打てるリスを発見し、
懸命に打ちました。
しかし微妙にリスが大きくて、
きまりません。

しかし、この近くにカムがはまって、
カラビナを介して20mザイルで下降。

滝から少し離れた側が登れるルートで、
そっちまで這い上がりました。

カムより大切な命はない、
という名言も頭によぎりましたが、
やはり1万円は貴重なので木に、
反対側のザイルをかけて、回収しました。

ザイルが木々にひっかかったりして
けっこう時間をくってしまいました。

この規模の滝の高巻きとしては過去最悪で、
これほど苦戦するとは、
この後が思いやられます。

④恐怖の一歩

すぐ上には15m滝が落ちています。

滝に向かって右側すぐの
岩稜を登るというトポに唖然。
「うへー」という心の声。

それほどまでに、
この滝は威圧的で十分に大きく、
右の岩場の傾斜はたっています。

とはいっても、
何箇所かザイルをかけれそうな木はあり、
最悪な状況での撤退は可能と判断しました。
かつ、登れると信じました。

実際高度感はありましたが、
III級レベルの登りでテラスにたどり着きます。

ここが悪名高い、トラバースポイント。

よく見てみると、
そんなに難しいルートではないんですが、
濡れてつるつるに光っていることと、
高度感が全ての恐れを生みます。

ここは確保なしには危険すぎます。

ここでもカムが活躍。
奥の方にガシッときまって見事な安定感。

ATC×20mで懸垂体制にしながら進みました。
たしかに絶対確保はされてましたが、
都度都度のロープの送り出しが面倒で、
それが逆に少しの危険を生んでいた気がします。

無事難所を突破した後、
今度は30mザイルをダブルで木にかけて、
一旦戻ってカムを回収。

ダブルロープシステムが機能しました。

⑤CS滝と3段20m滝

この後ゴルジュが狭くなり、
一箇所、手こずった場所がありました。

さらに進むとCS滝が・・・

水線上は厳しいと判断して、
左から岩場をよじ登りましたが、
どうしても足場が足りなくて断念。

ここで見れるようにしていた、
パンダさんのレポを見てみました。
そして、この滝は
右側から越えられるのだと知ります。

ただ、この日は水量が多く、
足場の岩が滑りに滑って、
これは不可能なんじゃないかと
諦めかけました。

それでも、
右側から越えた記事を励みに、
ぎりぎりのところで左足が上にあがり、
へばりつくように大岩を突破。

続く、3段20m滝は水量が多すぎて
ほとんど接近できませんでした。

左から越えていきます。

⑥30mと70mの両門

ここは本流が30m滝。
右から支流の70m段瀑が加わる
両門滝になっています。

戸倉谷ゴルジュも後半に差し掛かり、
この滝前はかなり平和的な空間でした。

巻きは右岸からです。

少し戻ってから斜面にあがり、
途中で滝側にトラバース。

滝の上部はゆるい傾斜で、
高巻き中には、この滝が十分
30mはあるなということがわかります。

ここからさらに上に行って
越えていきましたが、
分かりづらかったです。

⑦V字滝

そしてついに・・・

眼前に広がるは、
戸倉谷の盟主、50mV字滝。。。

V字滝は凄く奥行きがあります。
奥の直瀑まで合わせて
3段の滝と見ました。

比較的多めの水量で、
しっかりと描かれるV字。
緩やかで清廉な流芯。
限界を突破しないとたどり着けない1本。

そんな非日常的な空間に
身を置けていることに感動しました。

隔絶されている世界です。

これまで全ての1歩1歩が
この滝に繋がっていたんだなあとしみじみ。

約27分間、
楽しませてもらいました。

⑧詰めあげと脱出

V字滝は真ん中から登っていきます。

振り返ってもなかなかの景色。

そして、一番上の段。

ここは左岸高巻きになりますが、
けっこう悪かったです。

ここも泥付きの岩壁登攀になり、
スタンスもホールドも、
ぎりぎりをつなぎました。

III+ぐらいあったのではないか(?)
と思いますが、
冷静に登れたような気がします。

安定した場所に出るまでの
斜面もぐずぐずでした。

ここを越えて暫く進むと・・・

迫力満点の25m直瀑が待っていました。

ここで遡行終了となります。

右岸のほぼ垂直の崖に
ぶっといワイヤーが垂れ下がっていて、
それをごぼうで登って脱出しましたが、
けっこう大変でした。

別にルートがあればそれをおすすめします。

上にかかる赤い吊橋。

⑨右岸→ワイヤー→ワイドな斜面

赤い吊橋からは右岸沿いに伸びる
道を進んでいきましたが、
不明瞭になりました。

ワイヤーは発見したので、
それにそって尾根など下っていきました。

するとまた見失い、
けっこう眼前が広めのワイドな斜面
に出ました。

下に向かって一番右側から
偵察していきましたが、
どこも下が切れておりアウト。

下が樹林帯となっている
ワイドな斜面の下に向かって左側へ行きます。

すると、ワイヤーがありました。

かなり急な崖沿いでしたが、
ワイヤー沿いに降りれば下山できると信じ、
急降下していきました。

⑩空中に放出される

目を疑いました。

数メートル下で
崖は完全に切れており、

ワイヤーは空中に伸びて、
根から十数メートルの
木々とつながっている模様。

このままワイヤーを掴んで進めば、
足場はなくなって、
空中に放出されることは明白。

全身へ急速に
アドレナリンが放出され、
死の登り返しスタート。

⑪登り返し

『登れたところは、降りれる。』

これは、滝巡りで有名な法則ですが、
逆に言えば、降りれたところは、
登れるとは限らない。。。
僕が降りたのは今回そういう傾斜でした。

腕が途中で限界寸前までバンプし、
叫んで最大限の力を出し切り、
なんとかなんとか這い上がり。

下に向かってさらに左側に
別のワイヤーが伸びていました。

その後、またワイヤーを見失い、
ゆるそうなところをひたすら降りたら、
沢が思ったのと逆方向に流れていました。

そう、中奥川ではなくて、
戸倉谷に入ってすぐ上の
斜面に降りてきました。
(↓↓下山時の中奥川)

おそろしい下山でしたが、
無事で何よりでした。
以後気をつけます。

この後は津風呂温泉で
疲れを癒やしました。

⑫まとめ

戸倉谷は想像通りの険しい谷でしたが、
単独で遡行できて自信になりました。

最初の20m滝のルートも
V字滝上部の左岸巻きも、下山も、
全てルーファイの力が結果を大きく
左右すると感じました。

下山はワイヤーとモノレールを混同していて、
ワイヤーを目印にしましたが、
両者は完全に別物なので注意が必要です。

V字滝は素晴らしい滝ですが、
難所であり一定の経験と力が必要です。。

7月頭の中津川があまりにも険しく
生きてることそのものに対して真剣に、
また時間を大切にするようになりました。

いい感じの習慣構築が進んでいて、
戸倉谷での体験は、
その好循環の1つの表象でした。

コースタイム
8:03 中奥川渡渉
8:32 20m滝
9:28 15m滝
10:09 15m滝突破
10:44 30m滝
11:22 V字滝
11:49 V字滝発
12:15 直瀑の上
12:20 25m滝
<下山で苦戦>
14:06 中奥川

アクセス

Step1 川上村中奥川沿いを進む
Step2 広いスペースを越える
Step3 威圧的な嵓を発見
Step4 出合付近に駐車
Step5 中奥川を渡渉して遡行開始

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