滝いろ|九階滝

活動記録



九階滝

九階の滝—【秋田県 北秋田市 森吉】—

コメント

九階滝の前では不思議な感覚に陥った。
少年達の遊び場のようなずぶずぶで
綺麗な砂地。

来ては行けない場所に
来てしまったような言いようのない
禁断の果実感が僕を襲っていた。

滝の記録

訪問日 2015年8月29日
活動の形態:上級滝巡り(単独)
装備:沢タビ, 7mm30m×1
感動度:かなり~限りなく

桃洞へ行くことは前日夜早くに決定。
しかし、その近くの九階滝は、
「通常の難関滝(※)」の範疇を越えた
「ガチの難攻滝」であり、

※ いわゆる片道2~3時間・沢登り・渡渉・
鉄ハシゴ・急斜面・多少の不明瞭さなどのコース

100選だと具体的には
松見早戸茶釜御来光など。

すんなりとは訪瀑を決断できませんでした。

地形図はスマホに保存し、
ルートは滝人Collectionで、
出来る限り夜に予習。

問題の核心的なポイントは、
到達までに懸垂下降が2箇所あるらしいこと。
なのに関わらず30mロープとお助け紐が
各1本ずつしかないこと。

単純に沢登りをして、その後の沢下降であれば、
長いロープが一本あれば、その一本で何度でも
懸垂して降りていけばいいわけですが、

山ヤ系滝ヤのアプローチにおける
「到達までの間に懸垂下降が要る」
アプローチでは、

残置して帰りに同じ崖を登り返すために、
その懸垂をする数だけのロープが
必要になるということです。

先人が懸垂してる地点まで行ってみて、
本当に懸垂が必要かを判断、
無理そうなら撤退します。

①赤水沢

早朝は桃洞滝にアプローチし、
再び桃洞赤水分岐までバック。

そこからしばらくは道沿いに、
その後がっつり赤水沢沿いのルート。

ここは美しいというか、
平過ぎる滑床にただただ驚嘆しました。

赤水沢は自動車が走れるようなところもあり、
世界遺産登録が望まれる場所でした。

赤水沢に九階滝があるわけではありません。
あるのは尾根の反対側の様の沢。

様の沢の九階滝下流は
沢ヤですら突破困難な険悪な渓相なので、

赤水沢遡行→赤水沢の枝沢詰め上げ
→尾根(九階滝遠望)→様の沢枝沢下降
→様の沢でちょっと沢登り

となります。

下の写真の小滝を越えると、
右岸に進むべき枝沢が現れます。

②枝沢をゆく

赤水沢の枝沢はすぐに
大きなナメ滝が現れ、左から越えました。

しかしここで僕は切れて
落ちていたトラロープを入手します。
長さは約9m。

30mロープをダブルで懸垂したら15m分(1本目)。
そしてこの拾ったトラロープと
お助け紐10mを連結してシングルで残置すれば
長さ的には15mを越える(2本目)。

懸垂はできなくても
それを頼りに下降&登り返しが
できる可能性が出てきて
テンションが上りました。

その後下の写真左の、
2段の滝を越えた所で
ルートミスしました。

本来は左に進むところを
右に行ってしまいました。

南側の尾根から20~30分
本来進むべき場所に行くために
苦戦しました。

③遠望と下降

そして、九階滝の遠望。 
(落差は滝を下降した方が測った結果、
90m程度だそうです)

水線は細いけれども、凄い眺望。
距離はちょっと遠すぎますが。。

正しい場所の尾根は
踏み跡&赤テープもありました。

様の沢の下降開始点には
残置ロープがありました。
下降地点は遠望地点よりも北側です。

しばらくは普通ですが、
突然視界が切れるところが滝の落ち口で、
左岸から懸垂で降りる地点です。

【様の沢枝沢 1本目の滝】

残置ロープはなし。
ここでやや太めの木にスリングを巻き付けて、
お助け紐とトラロープを
ダブルフィッシャーマンで連結。

この即席連結ロープで少し滝から
離れながら木々にロープを
かけていって、降りました。

かなり急な崖でした。

【様の沢枝沢 2本目の滝】

2回目の懸垂地点の滝は
2段になっていて、
上段には残置ロープがありました。

下段には残置はなく、
ここが2回目の懸垂地点になります。

しっかりとした木は
けっこう急斜面を登らないとなく、
横着して細めの枝3本くらいを支点に
懸垂開始しました。

そしたら途中で全部枝が折れて、
下段の中の中間地点みたいな所に、
1Mぐらい滑落しました。。。危なかったです。

ここに残置スリングがあったので、
そこで改めて懸垂して下流へ。

最後に様の沢への出合滝も
ちょっとしぶかったですが、
突破してついに降り立ちました。

④天と地

九階滝前は廊下のようになっています。
そこに形成されるは、穏やかな砂地。

様の沢そしてルートの険しさ
に対してギャップが激しい、
優しげな滝直下には心底癒されました。

いわゆる「滝」としてみると、
水量は少ないし、直下までいったら
全体像が見えなくなります。

そういった点から、
王道の名瀑ではないことはたしかです。

しかし「滝」であることは間違いのない、
その「九階滝」という捉えようのない
巨大な存在は天に登るようなスリバチを描き出し、
奥森吉、秋田県が誇れる、
日本の絶景でした。

⑤谷底から脱出

様の沢九階滝直下は、
穏やかさと美しさで忘れてしまいそうですが、
冷静に考えればめちゃくちゃ険しい地形内で、
遭難可能性が高い、危険な場所です。

ここから脱出と生還は、
到達より、2段階くらい困難でした。

2回目に懸垂した地点では、
支点がおれてしまったので、
下段の上部部分をありえない傾斜を
木々を頼りに登っていく
スーパーパワークライムになりました。

なんとか突破し、
1回目の懸垂地点に辿り着きます。

その1回目に懸垂下降した地点に残置してあるのが、
細いロープのシングルなので
正直こころもとないというのと、

壁が泥状で、ずるずる滑り、
ほとんど足場があてになりません。

実際に何回か滑落し、
相当腕力も消耗しました。

しかし本当にこの場所で腕力が尽きたら、
谷から抜け出せなくなります。
そういう意味でこの九階滝は難関滝であり、
十分な経験が必要となります。

今回はぶっつけで残置した
細いロープのシングルで登り返しましたが、
やっぱりちゃんとしたのを2本持っていって、
プルージックとか、タイブロックとかで、
確保しながら登るべきだったと猛省しました。

⑥帰路へ

あとは、この滝を越えた後
ちょっと戻りの尾根までの帰還
(ルーファイ)が難しいこと。
軽く迷いましたが真のルートはやや左側でした。

あとは赤水の枝沢の下降と、
赤水沢の下降と、森の中を歩いて
駐車スペースへ。

↑赤水沢に戻ってきた時

滝王国秋田の中でも
最難かもしれない九階滝直下。

アプローチが困難だからこそ、
光る特別な空間であり、
秋田の滝中でも重要な一本だと思います。

ナメ沢と険谷の狭間の中で揉まれ、
少しだけ強くなった気がした1日でした。

アクセス

Step1 森吉山北部の太平湖方面へ
Step2 途中南下しクマゲラ保護センターへ
Step3 赤水沢分岐から赤水沢遡行
Step4 枝沢を詰める
Step5 様の沢枝沢を下降
Step6 少し登って到達

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